columns

朝日新聞「音楽人♪File」-1
2009.06.19

 初のステージ経験は14歳の時だった。
 いがぐり坊主頭のサイゲンジ少年は沖縄のライブハウスでシルビオ・モレノさんというアルゼンチン人歌手、アルベルト城間さんという日系ペルー人歌手(後にディアマンテスというバンドで活躍)、チャロさんという同じく日系ペルー人女性歌手の南米人バンドの中にいた。
 その頃僕はケーナという南米の民族フルートを独学で吹き始めて三年ほど。おやじの仕事の都合で住んでいた香港で、9歳の時「コンドルは飛んで行く」に衝撃を受けて以来、南米の民族音楽フォルクローレに夢中になっていた。帰国後沖縄の那覇にあるシルビオさんのお店に行ったのは前述のライブの数ヶ月前のこと(ちょうどその時は他にもアルゼンチン人の青年がいた)。シルビオさんのギター伴奏と青年の机を打ち鳴らすリズムとともにケーナを吹いた時、何かの扉が開いた。初めて人前で演奏する熱気とその「場」で生み出される音楽の興奮、今思えばカタルシスにも似た不思議な高揚感。この後シルビオさんのバンドに誘われ、サイゲンジ少年の音楽人生は幕を開けた。
 人生とは全く不思議なものだ。全ての出逢いが数珠のように繋がって、そのどれが欠けても今の僕はいないだろう。大学生になってブラジル音楽にのめり込んで、ケーナをガットギターに持ち替え、自分の音楽経験とその変遷を日本語のオリジナル曲に置き換えて生きていこう、と決めてからも、様々な思いがけない出会いに助けられ、思うままにアルバムを作り続けてくることが出来た。最近は続ければ続けるほど、あの日のサイゲンジ少年の感覚に近づいていく気がしている。
 出会いこそが僕の扉を開き、血肉になり、音楽へと変わってゆく。そんな僕を助けてくれた数々の思いがけない出会いを書いていこうと思う。

<朝日新聞・2009年6月19日(金)夕刊掲載>

戻る